スーパーマーケットなどで無料で配られる箸。
こんな箸なのですが、米を食べるわたしたち日本人ならもっといい話を知っておきたいもの。
奈良は吉野の箸にまつわるお話と、杉・檜(ひのき)を使った木工品についてお伝えします。
本記事の内容
- 箸のことを知ると身体にいい食生活のことがわかる
- 箸から生まれた木工房の世界でもっと生活が豊かになる
人間国宝級の師匠から学んだ木工の世界
吉野探検隊の女性隊員が興味を持って参加した、とある催し物。
そこで出会ったのが吉野の下市にある工房きえんでした。
工房きえんは本業に吉野杉や檜を使った箸作りに長年従事しています。
国内産の杉や檜を使った箸の魅力に加え、さらなる木工製品に取り組まれています。
そんな中で様々なアイデア商品や特殊技術を用いた木工品の開発に日々力を注いでいます。
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市販品の日本酒が銘酒に変化する魔法のお猪口
木工品の開発は、和歌山県高野町に居を構えていた故・新家虎雄氏との出会いが大きかったという代表の桝井さん。
この技術は人間国宝級とも言われ、実際に新家氏は人間国宝として推挙された実績を持つ人物だとか。
工房きえんの桝井さんは、師匠新家氏の最後の弟子ということで師匠がこの世を去る直前まで木工技術を学んだ実績があります。
また桝井さんはインターネットが普及しきっていない時代、精力的に商品開発を手掛けます。
2006年、2007年には端材や箸をアレンジした製品で地元奈良県からグッドデザイン賞を受賞。
木工に関して深い知識と理解を持っていたからこそ獲得した賞は、数少ない匠の技によるものです。
製品開発技術は女将さんにも伝わったのか、箸を用いて漆塗りの世界を展開。
渋染などで独特の世界観を演出する、唯一無二の箸を創出するなど桝井さんに負けないくらい精力的な方です。
奈良は吉野。下市町の箸産業
吉野探検隊は、工房きえんに取材を兼ねて訪問。
女性隊員が参加した催し物で、出会った女将さんとの会話で工房へおじゃましますとの約束がきっかけです。
吉野探検隊が始まった翌月に訪問が現実化しました。
箸工房に吉野探検隊の誰も訪れたことがなく、どのような場所か全然イメージできません。
細かな地図は、スマホのナビに頼るばかりで、ようやく工房きえんに到着することができました。
駐車場で見た光景は、右に高く積まれた大きな木のクッション。
対面となる左側には、野外で木工作業をしている一人の男性の姿でした。
隊員はわからないまま正面の作業場へ突入。
女性隊員はようやく女将さんと再会。
そして女将さんから発せられた声は、あちらの男性が行っている木工作業がストレス発散になるから行ってみる?でした。
何もわからず一人の男性が黙々と行っている木工作業場へ行ってみることに。
実はその男性こそが匠の技を持つ桝井さんその人だったのです。
木工作業体験ができるのかと思いつつも、桝井さんからは箸の歴史や現状についての話が始まりました。
吉野から始まった割り箸の文化
桝井さんの話は面白く、割り箸の文化はこの吉野が発祥という話がありました。
鉄道網が発達していなかったこともあり、割り箸は吉野でしか無かったのです。
その後、交通網の発展により遠く関東地域からも割り箸を買い求めてやってきた人が居たとのこと。
3秒までが箸に割り込みを入れるところ。6~8秒あたりが箸の上部を斜めに切り込むところ。
口に入れる先端部分を丸めるところ。
さらに漆の文化も奈良は曽爾村のぬるべという地域から始まったとのこと。
漆の木が今でも植林されているそうです。
工房きえんはこの曽爾村のぬるべから収穫した漆を使って工芸品を作っています。
このような歴史的な話は、その道のプロフェッショナルからしか得られない情報で、貴重なお話を聞けたこと感謝でした。
箸作りから見える林業の現状
割り箸づくりに従事している方は、木材の端材を入手して生産しています。
本来、木は丸太です。
しかしわたしたちが街で見かける建築木材は、四角です。
下のイメージにもあるように残った端材は薄いかまぼこ板で、ここから箸を取り出します。
かまぼこ板は薄ければ薄いほど、得られる箸の数は少なくなります。
果たしてこんなかまぼこ板に値段が付くのだろうかと通常は考えます。
四角い建築材木が取り出せたなら、余った端材など二束三文なんだろうと思いますが、
かまぼこ板の値段は、年々上がっているのだとか。
それは木造住宅の建築需要が減ったことで、木材供給量も減ったことが要因なのかもしれない。
さらに日本の林業の衰退で、やせ細った木ばかりとなってしまい、それに輪をかけるように林業に従事しなくなっている現状があるとのこと。
山を手入れしないことが、山肌に日の光を届かせなくなり、山には動物たちが生きていくための植物が育たなくなります。
それが原因で、山から里に動物が降りてきて作物などを荒らす要因になっています。
吉野杉と檜から作られた箸は健康にとってもいい
巷で配られている箸。
コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどではビニール袋に入れられた箸がレジ横に置かれています。
しかしそれらはいずれも真っ白な箸。
これは漂白剤で真っ白に仕上げられた箸だということをどれだけの人が知っているでしょうか。
漂白箸は昔、漂白の程度が酷いということで水につけた魚に影響があるなどの映像が流されたくらいです。
今の漂白程度は計り知れませんが、箸の役割は食べ物を口に運び入れることにあります。
その箸が化学薬品に汚染されている考えたならどうでしょう。
落ちたものを食べてはいけません、カラダに良い物を食べなさい。
お母さんから食べ物と健康について教えられたのに、実は身近な箸に健康を害するものが潜んでいるとしたら。
外食先で真っ白になっている箸を使うことに抵抗は感じないでしょうか。
工房きえんで作られている箸は、水以外に何も使用していません。
それは杉や檜が持つ抗菌作用が、わたしたちの口に入る食物にいい影響をもたらしてくれることを理解しているからです。
自然の力によってわたしたちは生かされている。
毎日使っている身近な箸に、もっと愛着を持ちたいと感じさせてくれました。
次世代へとつなぐ木工の技と箸の伝承
工房きえんでは箸作りが本業となっています。
一方で、匠の技を持つ桝井さんと商品開発に長けた女将さんの両輪。
この二人の技術は、工房きえんを次世代の木工の世界へと足を踏み入れています。
宅配の寿司などで見かける桶。
これは底板があって周りを細い板で囲まれた作りとなっています。
しかし工房きえんでは、完全一枚板からこの桶を作っています。
吉野探検隊は催し物で販売されていた一枚板の桶(おけ)を見せていただきました。
そして氣になった一つの桶に釘付けとなったのです。
それは枯木の木の根に近い木から作られた、木目と色のバランスがとても興味深いものだったからです。
また桶のフチは完全に丸い形をしておらず、微妙に曲線が加えられたアートな世界を感じさせてくれました。
吉野探検隊は全員の意見一致で購入決定。
箸作りの悩み、廃棄物
かまぼこ板から箸が作られた後、必ずその後には何かしらの木くずが発生します。
おがくずは肥料への転換などでお役立ちなのですが、他の廃棄は残ります。
そんな中でもっともお困りの廃棄品は、この紐のような木片です。
これは粉砕しようにも、粉砕機に絡まってうまく裁断ができません。
一方で繊維を取り出すにしても技術が追いついていないようです。
そこで吉野探検隊の女性隊員が催し物で女将さんに提案した枕への転用。
訪問した際に女将さんは速攻、枕を自作してくれていたのです。
紐状の木片は、固くなくフニャフニャしているので弾力が抜群。
吉野探検隊ではこの枕を更にバージョンアップして寝具に転換していきます。
吉野探検隊と工房きえんとのコラボを計画。
廃棄物を徹底的に減らしてエコを目指したいと思います。
アクセス
工房きえんへのアクセスはクルマでの移動が便利です。
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